Web入門¶
営業の若人を見て「もし教えるとしたらどうしよう」と考え、資料にでもするために作成した。
「ネットワーク」とは何だろう¶
インターネットは使っているが、技術的なことは知らないという知識の人を対象にインターネットやWebと呼ばれる
巨大なシステムを構成する、基本的な要素技術についての解説を目的としたものです。
ネットワークの具体例¶
「『ネットワーク』とは何ですか?」このような質問を受けた時あなたは質問に答えられますか?
私は「これだ!」と言い切れるトークのような歯切れのよい回答は持ち合わせていません。
ですので、私が「ネットワーク」と思える物の例をいくつか提示して、そのことについて観察してみます。
その中から共通している部分を探ることで説明を試みます。
例1:交通網¶
鉄道、高速道路、空路、海路、様々な形態があります。
鉄道を例にしましょう。
鉄道には通常、駅と線路があります。離れた場所にある駅を軌条(レール)で結び、軌条の上を走る専用の車両を走らせることで顧客に高速な移動を提供しています。
駅は終点や始発・路線の乗換駅などいくつかの種類があります。列車にも各駅停車の編成と一部駅を飛ばすことでより高速に運転する特急編成があります。
例2:支店網¶
銀行、郵便局、巨大なスーパーマーケットチェーンこれらはいくつもの拠点があります。
これらの拠点には支店・営業所・店舗などいくつかの種類があり重要度が異なります。
郵便局を例に考えましょう。各地域に郵便局があります。大きな町には「本局」などと呼ばれる局があります。小さな町には「出張所」と呼ばれる局があります。
本局は、顧客に対して24時間営業や、出張所では対応できない業務に対しても対応が行えたりします。本局のほうが少しリッチですね。
一方、出張所は局数が多いです。郵送・切手の購入のような基本的なサービスを受けるには出張所で十分ですし、近くにあるため要件を済ませるまで早くすみます。
さて、出張所は通常、管轄している本局が存在しています。そうすることで出張所では対応ができない要望に対して、「本局でお願いします」と伝えられます。
本局は支社が管轄し最終的には日本郵便局株式会社に繋がる階層構造になっています。
例3:サプライチェーン¶
今までの例は一つの企業体で片付く範囲でもありましたが、今度は違います。
製造業で使われることが多い概念です。
例えば自動車は数万点の部品からできあがっているようです。
ネジやボルト・鋼板のような素材を直接、切削・鍛造・鋳造して得られる部品もあれば、それらを使ってくみ上げるエンジンのような巨大な部品もあります。
これらを一つの企業で調達することは到底不可能です。そこで複数の企業(大きいものはデンソーのような上場企業から小さいものは町工場)まで
複数の企業が関わり最終的に自動車が出来上がります。
この自動車を組み立てるために必要な原材料や部品を企業間で調達・加工し、最終製品を安定的に作るための流れをサプライチェーンなどといいます。
例4:ライフライン¶
電気・ガス・水道・通信など生活に必要なものですね。
通常はパイプを配管し、発電所(電気)・河川(水道)から各家庭に届けられます。
各家庭は蛇口をひねったり、スイッチを入れたりで電気・ガス・水道を大体いつでも使うことができます。
各家庭には使用量を示すメーターがついており、どれぐらい使ったかは検針と呼ばれる作業によって確定します。
電気は発電所では高電圧のものを発電し、郊外ではこの高電圧の電気を巨大な鉄塔にかけた架線を通じて輸送します。
電圧を変化させるために変電所と呼ばれる施設を持ち、街中では電圧を下げ、電柱や地下配管を使い、ビルや家の中には配電盤で線を引き最終的におなじみのコンセントが壁や床や天井に配されます。
そのコンセントを通じでパソコンや空調のような電気機器を接続、使用します。
ネットワーク概念の抽出¶
4つほど私が「ネットワーク」だと考えるものを紹介しました。
共通しているものごとを探しましょう。
- 何かを「流す」ための構造である
- 流れを変える・生み出す拠点がある(駅、営業所、加工場、発電所)
- 流れの構造がある(線路、出張所-本局の階層、部品の供給者と消費者の関係、電線や配管)
もっと単純化して考えれば「点」とそれらの繋がりを表す「線」、それこそがネットワークの最も根本的な概念と言えるかもしれません。
次回以降はコンピュータネットワーク、特にインターネットとその周辺に関する技術について書いていきます。
用語¶
今後使うかもしれない基本的な用語です。
- ノード(Node)・節点:全節において拠点や点と呼んでいたもののこと
- エッジ(Edge)・辺:前節おいて流れの構造や線と読んでいたもの
- アドレス(Address)、住所:点を特定するための情報のこと。運ぶには行先が必要になりますよね。
※エッジコンピューティングの「エッジ」はまた別の意味です。
コンピューターネットワーク¶
今日ではコンピューター同士を接続して情報をやりとりするのは当たり前のことになりました。
その最も身近な例は電話網とインターネットでしょう。
この二つについて少し考えていきます。
電話網¶
各電話機の役割は何でしょう?ノードですね。電話線や4G回線などはエッジにあたります。
では、ノードは電話機だけでしょうか?それだけではありません。携帯電話の場合、基地局と呼ばれる設備と携帯電話が電波をやりとりしています。
基地局は光ファイバーで結ばれています。また、基地局は交換局と結ばれています。交換局で二つの電話回線を接続します。
また、ビジネスフォンの場合ですと、内線・外線の変換や内線で繋ぐために必要な機械が入っています。これは構内交換機、PBXなどと呼ばれます。
さて、電話網におけるアドレスとは何でしょう。当然、電話番号です。しかし、電話番号だけでしょうか?PBXの配下にある電話番号なら
内線で通話が可能ですね。これは「内線番号」と呼ばれますね。ここまでをまとめると
- ノード: 電話機、基地局、交換局、PBX(構内交換機)
- エッジ: 電話線、光ファイバー、電波
- アドレス:電話番号、内線番号
LAN¶
普段、「社内ネットワーク」と読んでいるもの、それがLANの一例です。LANはLocal Area Networkの略です。
LANにはどのような機器が接続されているでしょうか。パソコン、スマホはもちろんそうですね。さて他には?
パソコンからインターネットに接続するまで様々な機器があります。
いくつものLANケーブルを接続できるスイッチやハブと呼ばれる機器
WiFiの受け口となるアクセスポイント(AP)、そしてLAN同士をつなげるルータと呼ばれる機器があります。
それ以外には?例えばファイルサーバや複合機などもケーブルによってLANに接続されています。
では、アドレスは何でしょう?LANにおけるアドレスは「IPアドレス」が最も有名でしょう。言葉だけはどこかで聞いたことがある人も多いかと思います。
細かくいうといくつかの「アドレス」がありますが、とりあえずはIPアドレスだけ。
という訳でこれらをまとめるとLANを構成するネットワークの要素は
- ノード:PC、スマホ、複合機、AP、スイッチ、ルータ
- エッジ:LANケーブル(Eathernetケーブル)、WiFI電波
- アドレス:IPアドレス
IPアドレス¶
さて、ようやくIPアドレスが出てきたため話すことができます。
LANというネットワークのアドレスであったIPアドレスです。
実際にLANに繋がったパソコン(ノード)のIPアドレスを見てみましょう。
- Windowsのスタートボタンを押す
- 「cmd」と打つ
- 「コマンドプロンプト」というアプリケーションを起動する
- 出てきた黒い画面上で「ipconfig」と入力してエンター
以下のようなよくわからない文字列が出てきたかと思います。
Windows IP 構成 イーサネット アダプター ローカル エリア接続: 接続固有の DNS サフィックス . . . . .: nrima1.kt.home.ne.jp IPv4 アドレス . . . . . . . . . . . .: 192.168.0.15 サブネット マスク . . . . . . . . . .: 255.255.255.0 デフォルト ゲートウェイ . . . . . . .: 192.168.0.1 イーサネット アダプター Bluetooth ネットワーク接続 4: メディアの状態. . . . . . . . . . . .: メディアは接続されていません 接続固有の DNS サフィックス . . . . .:
「IPv4 アドレス」と書かれた先にあるドット区切りの数字「192.168.0.15」の部分がIPアドレスです。
隣の人とやってみたり、無線LANと有線LANの場合で「ipconfig」を打ってみて比べてみましょう。
少し違いがあるかと思います。
「IPアドレス」と一般的に言われているのはこのドットで区切られた4つの数字のことを指します。
各数字は0 ~ 255のいずれかです。
※「サブネットマスク」の項目もIPアドレスと同じ形をしていますが、これはIPアドレスではありません。
外線・内線番号とIPアドレス¶
実は上記の「192.168.0.15」というIPアドレスは電話で言うと「内線番号」にあたります。
では、(外線)電話番号に相当するものは何でしょうか。実はそれも「IPアドレス」です。
電話網の場合、内線番号と外線番号では形式が大きく違いますが、LANの場合はどちらもIPアドレスを使用します。
IPアドレスの場合、以下の範囲のものは電話の「内線番号」に相当するものとして取り扱うよう決められています。
- クラスA : 10.0.0.0 ~ 10.255.255.255
- クラスB : 172.16.0.0 ~ 172.31.255.255
- クラスC : 192.168.0.0 ~ 192.168.255.255
内線に相当するものなのでこれらは「プライベートIPアドレス」などと呼ばれます。
これに対して「グローバルIPアドレス」というものもあります。こちらがインターネットというネットワークにおけるアドレスです。
インターネットとIPアドレス¶
さて、今回はインターネットの話です。
「インターネット」とは何でしょう?巨大な一つのシステムでしょうか?
巨大な一つのシステムとはいえるかもしれませんが、どこか一つの巨大組織が全てを管理・保有しているているものではありません。
様々な組織や会社が独自にネットワーク(LAN)を構築しています。
これらを相互に接続したものがインターネットと言えるのかもしれません
個々の組織のネットワークを共通の通信規則(プロトコル)を使い相互に接続することにより実現された巨大な一つのネットワークです。
そのため、インターネットのノードやエッジは「基本的には」LANと同じ考えられます。
ただそのネットワークに参加しているノードや、ネットワークを流れる通信量は桁違いに大きなものになっています。
その膨大な通信を処理するために大量のスイッチやルータを備えた専用のデータセンターや、
国同士を接続するために海の底に敷設された光ファイバーケーブルなど特殊な設備が登場してきます。
グローバルIP¶
ではこの巨大なネットワークにはどのようなアドレスが使われているのでしょうか?
LANでも使われているIPアドレスです。大体は前章で上げたIPアドレス以外のものです。
グローバルIPはインターネットにおけるアドレスですのでインターネットに参加しているノードは全て異なるグローバルIPでなければなりません。
電話における電話番号です。郵便における住所です。そんな存在がインターネットにおけるグローバルIPアドレスです。
IPアドレスの個数¶
インターネットのアドレスがグローバルIPアドレスならば、インターネットに参加しているノードは全て異なったグローバルIPアドレスが必要になります。
IPアドレスは各桁が0 ~ 255の256個、それが4つで256 * 256 * 256 * 256 (大体43億)個までしか参加できません。
一方、2019年度の携帯電話出荷台数は約17億台です。捨てられる物もありますが、携帯電話以外にもインターネットに参加している機器の存在を考えるととても足りないはずです。
では何故、インターネットに接続できるのでしょうか?日本ががんばってグローバルIPの在庫を持っているからでしょうか?
実際のところ、グローバルIPを持っている機器はインターネットに接続している機器と比べるとはるかに少ないです。
社内LANに接続しているPCはグローバルIPを持っていません。
社内の固定電話から外線電話をかけると相手には会社の代表番号が表示されるのと同じように、
社内LANからインターネットに接続した時に相手に見えるのは、いわばそのLANの代表IPアドレスです。
代表となるグローバルIPアドレスがあり、うまいことLAN内にあるパソコンとの通信の間を取り持つことで
一つのグローバルIPアドレスしかなくても多くのノードがインターネットに接続できます。
IPアドレス制限¶
さて、ある電話番号からの受電を拒否するようにしたらどうなるでしょう?
「その電話番号を発信番号とする電話」は全て拒否されます。
逆に、特定の発信番号以外の受電を全て拒否したらどうでしょう。例えば会社の代表番号以外からの受電を拒否するように設定したら?
そのように設定された電話回線だと知っていて、電話が鳴ったら同じ会社の人からだと予想するでしょう。
IPアドレス制限も考え方は同じです。会社や事業所は特定のIPアドレスをいくつか持ってたりします。
逆に、その特定のIPアドレスを使える人は会社や事業所内の人間に限られるはずです。
このような考えを元にしたものがIPアドレス制限というものになります。
IPアドレスの配布¶
インターネットを全て保持している組織はないと言いましたが無法地帯でもありません。
例えばグローバルIPアドレスは多く見積もっても43億個の限りある資源で、誰が利用している管理する必要があります。
IPアドレス以外にもドメインやAS番号など、インターネット全体で重複をして欲しくないものは存在します。
そのため、それらを管理する団体が存在しています。
大本は「ICANN」と呼ばれる国際的な組織になります。「The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers」の略です。
そこから世界中の各地域(北米、中南米、アフリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋)の管理団体(アジア太平洋はAPNIC)、各国の管理団体(日本はJPNIC)、
国内の業者やISP(インターネットサービスプロバイダー)からISPの契約者に割り振られます。
参考¶
- NAT/NAPTとは:https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/nat_napt.html
- IPv4アドレス在庫枯渇とは:https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/ipv4-exhaustion.html
- IPアドレス管理の構造:https://www.nic.ad.jp/ja/ip/admin-basic.html